私が通勤で使う地下鉄の駅のそばに大きな書店があり、
そのウィンドーに「ジオラマ東京」という大きな絵地図が張られてる。
仕事が早く引けたある日、足を止めて眺めてみると・・・
「やっぱり、夢の島は島だ!」
運河を確保する為に、殆どの埋立地は「島」になっている。
わざわざ猫の写真を撮る為に遠くの島にに行かなくとも、東京湾岸は、「島だらけ」である。
東京湾岸に生きる猫たちにテーマを絞り撮影して20年。その集大成としてOMシステムギャラリー(東京都新宿区)にて2025年7月17~28日に写真展を開催させて頂きます。
私が通勤で使う地下鉄の駅のそばに大きな書店があり、
そのウィンドーに「ジオラマ東京」という大きな絵地図が張られてる。
って、「島」なの?
ロードマップじゃない。
一枚の大きな紙に、千葉県全体が印刷されている昔っぽい地図だ。
そこには丁度「東京湾」がすっぽり収まっている。
そう。神奈川県から東京、そして千葉県へと東京湾の海岸線が全て印刷されている。
パソコン地図やカーナビの画面では全体が見渡せないのでダメ。イメージが喚起されない。
少年時代から、地図と時刻表を眺めるのが好きだった。
深夜までプランを練って「未だ見ぬ土地」に想いを馳せてた。
紙の地図を見て、想像して、印を付けていく。
そんな作業が、五感を刺激してクリエイティブな発想がわくのだと思う。
だから私は、セレクトした写真は全てプリントにしてみる。
手でめくって、並べてみて、拙いものは破り捨てて。
何日か、何年か経ってから見返して。
足りないものがたくさん見えてきて、そしてまた撮影に行く。
今は、見知らぬ絶景より、猫たちの日常が普通にある景色に憧れる。
この漁港の猫は?あの公園の片隅に猫がいそうだな。
こうして毎週末、東京湾岸に通い詰めた。
地図はあっという間に印だらけになって行った。
<つづく>
衝撃的な出来事に興奮してあまり眠れなかった。
明るくなるのを待って、あの場所に再訪した。
ずいぶん前から、街中で野良犬を見かけなくなりました。
そして今、街の風景から野良猫の姿も消えつつあります。
埋め立てによって生まれた、東京23区内の無人島「○○島」。
賑わいを失った海沿いの公園や遊歩道、生活漁港、奇跡的に残された自然海岸――。
東京湾岸には、目には見えない境界線で区切られた、“隙間”のような場所が点在しています。
そんな、人の関心が届きにくい場所だからこそ、猫たちは人知れず、ひっそりと暮らしていけるのです。
彼らは、自らの意思でこの場所に来たわけではありません。
飼い猫の“半分”ともいえる人生を、ここで生き、ここで育み、やがて静かに姿を消していきます。
野良猫は野生動物では無いので人の助けがなければ、生き延びることはできません。
人家の無い海辺の環境はとても過酷ですが、彼らはただ「今日を生き抜くこと」だけを考え、そして今日も、あの人の気配をじっと待ち続けています。
人間の都合に翻弄されながらも、短い一生を懸命に生きるその姿を、「記録」ではなく「記憶」として残したい――。そう強く思い、私は東京湾岸で20年にわたり、猫たちを撮り続けてきました。
主なロケ地:東京都 江東区・品川区・大田区 / 千葉県 富津市
■会期 2025年7月17日(木)~7月28日(月)
■OMシステムギャラリー 写真展情報
■OM SYSTEM ホームページ
■ギャラリートーク
2025年7月19日 16:30~17:15
写真展DM、写真展レイアウト、写真集「LIFE」のディレクションをお願いしました、
アートディレクター三村漢さんをゲストに迎え、ギャラリーラウンド形式で作品・写真集のお話をさせて頂きます。※予約不要・無料
■写真集
本写真展開催にあわせて制作しました写真集を、ギャラリーで販売します。
アートディレクション 三村漢氏
■出展作品数 A2変形サイズ 60点
■作者プロフィール
1963年群馬県生まれ 東京都在住の会社役員 中学時代からカメラを片手に旅に出る。
鉄道情景写真を好んで撮影していたが、2005年にデジタルカメラのテスト撮影で近所の野良猫を撮影したのをきっかけに猫の写真に興味を抱く。
以降、会社勤めの傍ら休日の全てを使い、東京湾岸地域に生きる外猫たちの『記憶』をテーマに撮影。
■主な個展
2007年3月~ キヤノンギャラリー銀座
他5都市巡回(第17回 林忠彦賞 最終候補作品展)
2010年2月 エプソンギャラリーエプサイト(スポットライト制度 第1回対象作品展)
2010年2月~ キヤノンギャラリー銀座 他2都市巡回
2011年6月 ギャラリールデコ(渋谷)
2013年8月 コニカミノルタプラザ
2016年2月 コニカミノルタプラザ
2019年10月 NineGallery
2023年5月 富士フイルムフォトサロン東京/大阪(※鉄道モチーフ)
2024年8月 富士フォトギャラリー銀座
ヤバイと思った。
10枚位撮れただろうか。
茶トラは、1分程私を見定めるとクルッと向きを変え帰って行く。
「何?」
訳も分らず、とにかく後を追った。
枯れ草の空き地の向こうは運河だった。
まるで「ついて来い」と言わんばかりに時々振り返りながら
彼女は来た時と同じように迷いも無く歩き続けた。
どこの空き地もそうだけど、ここも不法投棄の家具が散乱している。
そのせいで、見通しが利かない。
スチール製のオフィス棚が散乱した一角で彼女を見失った。
「うっ!」
そこには、若い猫達が多数、
冷たい海風に震えて、じっとうずくまっていた。
辺りは暗くなってきた。
情況が把握出来ず、私はうろたえた。
「こいつらのご飯を何とかしないと、、、」
今まで野良猫にご飯などあげた事など無かった私が、
生まれて初めてそんな衝動に駆られた。
自分でも不思議に迷いが無かった。
「弁当でもなんでもいいさ」
急いで車を走らせ、コンビにに向かった。
コンビニで普通にキャットフードが売っているという事実を、
この時初めて知った。
〈つづく〉