2025年6月29日日曜日

【LIFE 写真展によせて: 011】写真集を販売します!


写真展の公式写真集として、展示作品をベースに、メジャー写真展未発表作品を加えた星野俊光の猫写真撮影20年の集大成的となる写真集を発行します。

販売は、写真展会場で7月17日~選考販売、追ってネットショップでの販売も致します。
星野がギャラリーに在廊する日(土日祝日)は、カード決済(Square)と
PayPayでの決済も可能です。

写真集は、本文はラフ感がありながら若干の光沢もある、めくり心地の良い紙にオフセットUVインクで印刷、全ページが印刷とは思えない立体感のある写真表現になりました。
表紙は控え目な再生クラフト紙をあえて選択、表紙のデザインの答えはページをめくった先にあります。

写真集は書店では販売しませんので、サインとエディションNoをあらかじめお入れしてお渡しいたします。


定価:3,300円(税込)

サイズ:21×20cm
ページ数:96P(作品77点)
表紙:ソフトカバー GAクラフトボード(古紙パルプ100%使用のFSC®リサイクル認証紙)

エディション:700 (ネット販売は300部予定)

著作・製作:星野俊光
アートディレクション:三村漢
プリンティングディレクター:鈴木利行
印刷:株式会社アルキャスト

2025年6月28日土曜日

【LIFE 写真展によせて: 010】写真集と展示プリント

 


「ILFORD GOLD FIBER GLOSS」A2サイズ(25枚入)を3箱使って60枚のプリントを仕上げる。プリンターはCanon PRO-1000。PRO-2000ではこの用紙のポテンシャルを引き出せないので、時間はかかるが自宅で少しずつ印刷した。

2007年のキヤノンギャラリーでの個展は銀塩プリント、2010年は「Canon PIXUS PRO9500Ⅱ」を使用。今回は当時のデータをそのまま(私は撮影した時の現像を再現像することは無い)現代のインクジェットプリンターで出力すると、当時は自分でも気が付かなかった細かなニュアンスまで表現できていることに驚く。

そして、裏打ち前に写真展に併せて販売する写真集の本機での印刷ペラとの突き合わせ。

写真集はオフセット印刷なので、ラボ経験があるとはいえ私にはまったくお手上げ。
なので、今回アートディレクションをお願いした三村漢さんの私の作品に対する解釈と、それを油性インクに変換するプリンティングディレクターの鈴木利行さんにほぼお任せ。

印刷方法が異なること以前に、見る空間が異なること、展示と写真集は異なる写真表現であることから同じにする必要は無いが、2人のディレクターが解釈した写真集の色を参考にさせて頂き2割程度は展示プリントを再プリントしました。

1箱37,000円の用紙を結果4箱消費。
緊張の連続でしたが、作業を終えた今は何か少し寂しい気持ち(苦笑)

写真は「撮る」「纏める」「印刷する」「見て頂く」と1ショットから4回も楽しみがあるから、一つのテーマで20年も撮影を続けることが出来たのかな、と思います。



2025年6月26日木曜日

【LIFE 写真展によせて: 009】 そこは、やはり「島」だった!

 私が通勤で使う地下鉄の駅のそばに大きな書店があり、
そのウィンドーに「ジオラマ東京」という大きな絵地図が張られてる。

いわゆる「鳥瞰図」、東京湾上空から「東京」を俯瞰した地図だ。
仕事が早く引けたある日、足を止めて眺めてみると・・・


「やっぱり、夢の島は島だ!」

運河を確保する為に、殆どの埋立地は「島」になっている。
わざわざ猫の写真を撮る為に遠くの島にに行かなくとも、東京湾岸は
、「島だらけ」である。

「東京湾岸のねこたち」

テーマとして面白いじゃないか。

ちょっとした閃きから始まった物語。
ストーリーを書き上げるのに、まさか20年の歳月を費やすとはその時は全く想像できなかった。




<つづく>

2025年6月19日木曜日

【LIFE 写真展によせて: 008】夢の島

 って、「島」なの?


私が子供の頃、「夢の島」ってゴミ問題、環境公害問題の象徴だった。

ブルドーザーと廃棄物を積んだトラックが行き交うゴミの島
カラスとポリ袋が舞う、荒涼たる東京の人工島

そんな映像をテレビで見ても、自然豊かな田舎で少年時代を過した私にはピンと来なかった。
やがて、「夢の島」は、ドキュメンタリー番組にも登場しなくなり、何十年もその地名を思い出す事は無かった。

「ここって、今では島じゃないんだな。」

野良猫の写真を撮る為に、緑豊かな「夢の島」に通うようになった。 
でも、此処が島だと実感する事は無かった。


かつての有毒ガスが漂う島も、うっそうと茂った木々に囲まれたおよそ東京とは思えないオアシスになっていた。
そして、埋め立て事業は進み、遥か2キロメートル先まで陸地になっている。
こんな深い雑木林は、今じゃ私の田舎にも存在しない。 皮肉なもんだ。


新木場の駅から湾岸道路を渡れば、すぐそこが「夢の島」。
車で来ても、自転車で来ても、歩いて来ても、普通にやって来れる「島」。

高速道路や鉄道が通り、かつて此処が海だった事すら、人々は忘れ去っているだろう。

公園のあちこちにある「ガス抜き」のパイプが、かつての公害の象徴「夢の島」を物語るモニュメントとして、
記憶を風化させないように静かに物語っていた。




2025年6月15日日曜日

【LIFE 写真展によせて: 007】そして先ず千葉県全図を買った。

ロードマップじゃない。
一枚の大きな紙に、千葉県全体が印刷されている昔っぽい地図だ。


そこには丁度「東京湾」がすっぽり収まっている。
そう。神奈川県から東京、そして千葉県へと東京湾の海岸線が全て印刷されている。
パソコン地図やカーナビの画面では全体が見渡せないのでダメ。イメージが喚起されない。

少年時代から、地図と時刻表を眺めるのが好きだった。
深夜までプランを練って「未だ見ぬ土地」に想いを馳せてた。

紙の地図を見て、想像して、印を付けていく。
そんな作業が、五感を刺激してクリエイティブな発想がわくのだと思う。

だから私は、セレクトした写真は全てプリントにしてみる。
手でめくって、並べてみて、拙いものは破り捨てて。

何日か、何年か経ってから見返して。
足りないものがたくさん見えてきて、そしてまた撮影に行く。

今は、見知らぬ絶景より、猫たちの日常が普通にある景色に憧れる。
この漁港の猫は?あの公園の片隅に猫がいそうだな。

こうして毎週末、東京湾岸に通い詰めた。

地図はあっという間に印だらけになって行った。



<つづく>

2025年6月14日土曜日

【LIFE 写真展によせて: 006】眠れぬ夜なんて、何十年ぶりだったか。

衝撃的な出来事に興奮してあまり眠れなかった。
明るくなるのを待って、あの場所に再訪した。


「ナ~ンダ!」

少し靄った朝だった。

昨夜のカリカリの場所の先には、廃家具や発泡スチロールで出来たシェルターが何棟も立っていた。
猫缶やカリカリも堂々と見える場所にストックされ、気付いた人が開けて与えるシステムになっているようだ。

奴らといえば、テトラや防波堤の上で「今日も、明日も生きてますよ」みたいに何食わぬ顔で身繕いしてるし、、、

冷静に考えれば、あれだけの数の猫が飢え死に寸前で此処に捨てられたんじゃない事ぐらい分るけど、、、

茶トラに選ばれた私が、あの子達の空腹を満たしたのは事実だし、、、

とにかく私は、少年の片思いみたいなセツナイ一夜を過ごした。

「デジタル写真の実態の無い儚さ&猫達のつかみどころの無い存在感&海への幼い頃からの憧れ」

何の脈絡も無く、私の中でそれらがリンクし、イメージがドンドン膨らんでしまった。

そう、物語の扉を開けてしまったのだ。





<つづく>

2025年6月5日木曜日

【LIFE 写真展によせて: 005】 猫が怖いと思った。

漆黒の闇の中、足元さえおぼつかない。  
この時、懐中電灯は次の撮影での必需品だと思った。

東京の、その気になれば駅からも歩ける場所に、
こんな深い闇が存在するなんて思っても見なかった。
キャットフードを手に、慎重に来た道を戻った。

運河の向こうは、煌びやかな街。こちらは、まるでサバンナ。  
考えてみれば、元々ここは海だった場所。
「埋め立てる」事に意義が有った大規模公共事業のお陰(ツケ?)で、
東京湾岸には誰も知らない広大な隙間が多い。

だいぶ目が慣れてきた。
相当空腹だったんだろう。
ビニールのガサガサ音に、猫達が飛び出してきた。

「待ってろ、いまやるから」

喧嘩にならない様に、何ヶ所かの家具の上に分けて置いた。

「ガリガリ」「ガリガリガリ!」
「ガリガリガリ、ガリガリガリ!ガリガリガリ!!!」

なんて事だ! 気がつけば、周りをぐるっと十数匹の猫に囲まれた私。
こいつらがライオンのように本気で私を襲ったら、、、

猫に恐怖を感じた人は、そうはいないと思う。
漆黒の闇に支配された満点の★の下、恐怖の音だけがこだましていた。




<つづく>