2025年6月5日木曜日

【LIFE 写真展によせて: 005】 猫が怖いと思った。

漆黒の闇の中、足元さえおぼつかない。  
この時、懐中電灯は次の撮影での必需品だと思った。

東京の、その気になれば駅からも歩ける場所に、
こんな深い闇が存在するなんて思っても見なかった。
キャットフードを手に、慎重に来た道を戻った。

運河の向こうは、煌びやかな街。こちらは、まるでサバンナ。  
考えてみれば、元々ここは海だった場所。
「埋め立てる」事に意義が有った大規模公共事業のお陰(ツケ?)で、
東京湾岸には誰も知らない広大な隙間が多い。

だいぶ目が慣れてきた。
相当空腹だったんだろう。
ビニールのガサガサ音に、猫達が飛び出してきた。

「待ってろ、いまやるから」

喧嘩にならない様に、何ヶ所かの家具の上に分けて置いた。

「ガリガリ」「ガリガリガリ!」
「ガリガリガリ、ガリガリガリ!ガリガリガリ!!!」

なんて事だ! 気がつけば、周りをぐるっと十数匹の猫に囲まれた私。
こいつらがライオンのように本気で私を襲ったら、、、

猫に恐怖を感じた人は、そうはいないと思う。
漆黒の闇に支配された満点の★の下、恐怖の音だけがこだましていた。




<つづく>