2025年5月22日木曜日

【LIFE 写真展によせて: 003】 始まりは突然だった。

 2005年3月26日、衝撃的な出逢いは突然やってきた。


今日も海沿いの公園でたくさんの猫たちに出会ったけど、全然シャッターを切っていない。

安全な、無難な猫の写真を撮るんだったら、私じゃなくても良い。

空振りだっていい。

五感を駆使し、シックスセンスを頼りに歩き、待ち、疲れ果てて帰る。

それが私の撮影スタイルだから、それでいいのだ。

夕方の渋滞を避けようと、早々に切り上げ帰途に着いた。

フロントガラス越し、枯れ草に覆われた空地の向こうの夕日が綺麗だった。

「ここに猫がいたら絵になるのにな~」

人家も無く、倉庫ばかりで人影も無いこんな場所に、野良猫がいるはずも無い。

誰もがそう思うような場所だった。

「野良猫」は野生動物じゃない。  

毎日、優しい人にご飯を貰わなければ生きていけない。

人々の暮しのちょっとした隙間でひっそりと生きているのだから、

こんな生活感の無い埋立地にいるはずも無い。


でも、どうしても、確認したかった。


路側帯に車を止めて、EOS20DにEF70-200mmを付けて、海の方へ歩いてみた。 

そう、撮る気満々で。

「やっぱり!」

夕日の向こう側から、茶トラが悠々とこちらに向かって歩いて来た。  

その「映像」は、まるで映画のワンシーンのようだった。

突然の出会いに、マンガのように震えが止まらなかった。

不思議と、こんな時はマニュアルフォーカスでも歩いてる猫にジャスピンになる。 

人間の集中力って凄いと思った。

〈つづく〉



 2007年 「東京湾岸のねこたち」キヤノンギャラリー 展示作品